発達障害（ADHD）：「わかっているのにできない」から生まれる困難と理解の必要性

発達障害（ADHD）：「わかっているのにできない」から生まれる困難と理解の必要性

「発達障害」は、生まれつき脳の機能の発達の仕方や働きに偏りがあることによって、日常生活や社会生活で困難が生じる状態を指します。その一つに**ADHD（注意欠如多動症）**があります。

ADHDの特性は、主に以下の3つの症状に分けられます。

1. 不注意（集中力の散漫、忘れっぽさなど）
   • 物事に集中し続けることが難しい、すぐに気が散る。
   • うっかりミスが多い、物をよくなくす。
   • 物事を順序立てて考え、段取りを組むのが苦手。
   • 予定や約束を忘れやすい。
2. 多動性（じっとしていられない、過剰な動きなど）
   • 手足をそわそわ動かす、貧乏ゆすりをする。
   • 座っていられず、席を離れてしまう。
   • 静かに遊んだり、活動したりすることが難しい。
3. 衝動性（考える前に行動する、待てないなど）
   • 質問が終わる前に答えてしまう、人の話に割り込む。
   • 順番を待つのが苦手。
   • 感情のコントロールが難しい。

これらの特性は、子どもだけでなく大人になってから、仕事や家庭生活での困りごととして顕在化することもあります。特に、大人の場合、多動性は落ち着く傾向が見られますが、不注意の特性は残ることが多いとされています。

ADHDをめぐる誤解と真実

「集中力が足りないのは努力不足」「だらしないのは性格の問題」といった誤解をされがちですが、ADHDの特性は本人のやる気や努力の問題ではなく、脳の機能の特性によるものです。神経伝達物質（ドパミンやノルアドレナリンなど）の働きに関連があるとされ、「わかっているのに、どうしてもできない」という歯がゆさを本人は抱えています。

必要な支援と理解

ADHDの困りごとを軽減するためには、以下のようなアプローチがあります。

• 環境調整： 集中しやすいようにデスク周りを整理する、リマインダー(
• 忘れてはならないことを思い出させること）を徹底するなど、特性に合わせて生活や仕事の環境を整える。
• 心理社会的治療： ソーシャルスキルトレーニング（SST）などで対人関係や行動のスキルを学ぶ。具体的には、困りごと（あいさつがうまくできないなど）をテーマに設定し、ロールプレイ（それぞれが役割を演じる）を通じて、適切なあいさつのしかたなどを習得していく。

　　　SSTをどこでおこなっているか…医療機関（精神科のデイケアなど）、福祉施設（就　　労移行支援施設）など。

• 薬物療法： 医師の診断に基づき、特性の症状を緩和するための薬を使用する。

　ADHDの治療は、薬が開発され、心理社会的治療も効果をあげています。しかし、最も重要なのは、周囲の理解です。発達障害は個人差が大きく、特性の出方も人それぞれです。その人らしさが活かせる環境で力を発揮できるよう、社会全体で多様な特性を理解し、適切な「合理的配慮」（合理的配慮とは、車いすを使っている人のために、お店の入口に携帯用のスロープを出すなど、必要に応じて個々人に合わせておこなわれる調整のこと）が求められています。

苦手を克服する努力を強いるのではなく、「苦手な部分も含めて自分の一部」として受け入れ、生活の工夫と支援を活用することで、ADHDの特性を持つ人々がより暮らしやすく、能力を発揮できる社会を目指すことが大切です。

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